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Channel: 藪井竹庵
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反魂香

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イメージ 1 「反魂香(はんごんこう)」と云うオカルト噺は東京の演題で、上方では「高尾(たかお)」の演題でやります。享保18(1733)年に出版された「軽口蓬莱山(かるくちほうらいさん)」と云う笑話本にある「思いの他の反魂香」が原話。

 内容は、「不動坊(火焔)」と云う演目と同様のオカルト的な噺なので、怪談噺とも云えるのですが、圓朝が作った「真景累ヶ淵」のような純然たる怪談噺ではなくて、むしろ滑稽噺と云えるような、ぜんぜん怖くない演目です。

 因州鳥取の島田重三郎と云う侍が、江戸詰めの話の種に吉原の遊廓へ行き、三浦屋の高尾太夫(二代目)に一目惚れ。重三郎と高尾は逢瀬を重ねますが、その事が国元の殿様に知れ重三郎は追放処分。その間に高尾太夫は仙台の殿様の目に留まり身受けされますが、云う事を聞かないので斬り殺されてしまう。その経緯は、ちょっとややこしいのですが東京では、先代の金馬さんなどが同じ演題の「高尾(仙台高尾)」でやってます。

 重三郎はそれを知り髷を落として坊主になり、高尾に貰った「反魂香」を焚いては、高尾の魂を呼び出して逢っている・・・と云う話を、毎度お馴染みの町内のスットコドッコイの八五郎が聞きます。三年前に死んだ女房の「おかじ」に逢おうと薬屋へ「反魂香」を買いに行きますが、薬の名前を間違えて越中富山の「反魂丹」を買って帰り、火鉢にくべたがなかなか女房が出て来ないので、袋ごと放り込んだら煙がモクモク。

 女房の「おかじ」がなかなか出てこないので「かじ~かじ~」と呼び掛ける。
 隣では「火事~火事~」と云う声が聞こえ煙が入ってくるから驚いて八公のところへ行くと大変な煙。こりゃ大変と水をぶっ掛ける。

 やいやい。何だってウチん中へ水を撒くんだい。
 だっておめぇんとこで火事を出してるからよ。
 かじが出ねぇからけむぅ出してるんだい。

 上方版と東京版では若干の設定や人物の名前が違いますが、上方では当代の三代目 桂春團治。東京では八代目 三笑亭可楽や、その弟子の夢楽が演じたものが知られています。こう云う演目は、途中で「はめもの(お囃子)」が入る上方の演出に軍配が上がるようです。

 高尾太夫と云うのは、吉原の大店(おおみせ)三浦屋に伝わる花魁の大名跡です。吉野太夫・夕霧太夫と共に、花魁の三大名跡と云われました。東京の落語で云えば、三遊亭圓生とか三笑亭可楽とか柳家小さんと云う大名跡で、花魁のナンバー・ワンが代々襲名したそうです。この演目で語られる高尾は二代目で、万治高尾とか仙台高尾と呼ばれた花魁。落語には「紺屋高尾」と云う演目がありますが、その高尾は五代目。

映像データ・・・昭和54(1979)年8月31日 第136回落語研究会 国立小劇場 志ん朝41歳時

 データ・・・三代目 古今亭志ん朝 昭和13(1938)年3月10日~平成13(2001)年10月1日 享年63 前名=朝太 出囃子=老松 本名=美濃部強次 志ん生二男

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