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それからと云うものは、寝てはうつつ、起きては夢の幻の・・・とさながら「返魂香」のごとく、反魂香の事が頭から離れなくなってしまいました。もちろんこれの大元の原典は、唐の時代の白居易(はく・きょい=白楽天 772~846)の「李夫人詩」の逸話にあるもので・・・前漢の武帝が李夫人を亡くした後に道士に霊薬を整えさせ、玉の釜で煎じて練り、金の炉で焚き上げたところ、煙の中に夫人の姿が見えたと云うのが原典です。
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日本では江戸時代に読本や画集や、人形浄瑠璃・歌舞伎の「傾城反魂香」の題材となりました。さらにそれが笑話本になり「高尾(太夫)」と云う上方落語になり、それが東京へ移植されて「反魂香」と云う演題になっている訳ですね。
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それらの事をひっくるめて壮大な反魂香のまとめ記事を寝ながら推敲したのですが、何しろこの暑さでは資料集めがままならず、ひとまずそれはペンディングにして、ごくお手軽な簡略版として「反魂香考」の記事タイトルで可楽音源を紹介する事にいたします。
14:42 反魂香 /三笑亭可楽
データ・・・八代目 三笑亭可楽 明治31(1898)年1月3日~昭和39(1964)年8月23日 享年66 前名=六代目 春風亭小柳枝 出囃子=勧進帳 本名=麹地元吉(きくちげんきち)
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音源データ・・・昭和38(1963)年5月31日 東宝名人会 可楽65歳時
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いやはやなんともこの舌っ足らずな早口の江戸弁の語り。何を喋っているんだかよく聴き取れない方もいらっしゃるかも知れませんが、これこそ正に通好みの生粋の江戸前の語りなんです。
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確かに志ん朝の「反魂香」の語りは判りやすくて上手いです。可楽の語りはその点、何を云ってるんだか聴き取れない部分があったとしても、生粋の江戸前落語の味を感じさせてくれる噺家でした。